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2022年8月12日(金)
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お家やお部屋に合うエアコンの選び方【玉名店スタッフ】
スタッフブログをご覧のみなさん!こんにちは!
今回スタッフブログを初めて書かせていただきます。
私の趣味や休日の過ごし方など毒にも薬にもならないような話を延々としてもよかったのですが、どこにも需要が無さそうなので今回はルームエアコンについてお話をしたいと思います。
エアコンを購入されるとき、多くの方は家電量販店に向かわれると思いますが、購入するエアコンの能力はどのようにして決めておりますでしょうか。
大多数の方がエアコンの能力表に記載されている「畳数のめやす」を参考に購入するエアコンの種類を選定しているのではないでしょうか(図1)。
このエアコンの選定方法、実は欠陥があります!
それは「畳数のめやす」が1964年当時の木造無断熱平屋住宅を基準としているからです!
つまり、現在の住宅で記載されている「畳数のめやす」を頼りにエアコンを選定してしまうと、必要以上の能力のエアコンを購入してしまうことになってしまうんです!
「必要よりも大きい能力ならいいじゃん!大は小を兼ねるって言うよ!」
今、そんな声が聞こえてきました。
ただその意見、エアコンに限っては違うと声を大にして言わせてください!(大は小を兼ねるので)
それはなぜか?今から順を追って説明させていただきます。
まず、エアコンの性能を表す指標としてCOP(Coefficient of Performance)というものが存在します。
これはエアコンの消費電力1kWに対して、どのくらいの冷気・暖気をつくれるか、という指標になり、COPの値が大きければ大きいほど、そのエアコンの性能は良いとされます。
COPは能力を消費電力で除することで求めることができますので、図1のエアコンの暖房時の定格時のCOPは2.5kW÷0.45kW≒5.56となります。
この場合、図1のエアコンは消費電力1kWに対して5倍の暖房能力を発揮することができるということになり、省エネ性能が非常に高いことが分かります。
▼図1
しかし、COPはエアコンの負荷率によって変動します。
図1のエアコンは、いつ、いかなる運転状況でもCOPが5.56ではない、ということです。
図2は負荷率とCOPの補正値の関係を表した図になります。
稼働時の負荷率に応じたCOPは定格時のCOPにCOP補正値を乗ずることで求めることができます。
したがって、図2より、負荷率が0.8前後で運転させているときが最もCOP補正値が大きくなるため、最も効率が良いことが分かります。
▼図2
ここで、先ほどの「大は小を兼ねる」といった話に戻ります。
たとえば6畳の洋室があったとします。
この6畳の洋室に必要な暖房能力は1kWだとした場合、図1の定格暖房能力は2.5kWであるため、負荷率は1kW÷2.5kW≒0.4となります。この場合のCOP補正値は図2より約0.5となり、補正後のCOPは5.56×0.5=2.78となります。
上記の結果より、6畳の洋室に6畳用のエアコンを設置した場合でもエアコンの能力は過剰となってしまい、エアコンの効率は定格時のCOPの約半分にしか満たないといった結果となってしまいました。
これではどんなに性能の優れたエアコンを買っても電気代は余計にかかってしまいます。
無駄な電気代を払わないようにするためにも、実際の居室に必要な冷暖房能力を計算し、エアコンの能力と比較して実際の選定を行う必要があるということです。
では、どのようにして各居室に必要な冷暖房能力を計算するのか。
以下の要領で計算を行います。
- UA値(外皮平均熱貫流率)※1を用いてQ値(熱損失係数)を求めます。
Q値=(UA値×外皮面積(㎡)+気積(㎥)✕換気回数※2(回/h)✕0.35)÷床面積(㎡)
- 求めたQ値を用いて必要冷暖房能力を求めます。
必要冷暖房能力(W)=床面積(㎡)×Q値×希望する室温と外気温との差(℃)
※1.UA値は各設計担当に聞いてください。
※2.換気回数は0.5(回/h)とすることが一般的です。
上記の計算方法は日射熱取得率などを考慮していない概算の式になります。
しかし、おおまかに必要な能力は上記の式を用いて求めることができると考えます。
次は算出した必要な能力をもとに、実際にエアコンを選んでいきたいと思います。
▼図3
図3はエアコンの〇畳用ごとの能力をまとめたものになります。
薄い色で塗られている部分は定格能力を、濃い色で塗られている部分は最大能力を表しています。
このように並べてみると、最大暖房能力ごとに3つのグループに分けることができます。
6畳用から8畳用までの1グループ、10畳用から14畳用までの1グループ、200Vの14畳用から29畳用までの1グループ、この計3グループです。
今分けたグループは畳数の表記こそ違いますが、最大暖房能力に限っていえば、それぞれのグループの値はほぼ変わりません。
〇畳用の〇に入る値が大きくなればなるほど、消費電力は大きくなってしまうことを考慮すると、前述の3グループの中ではそれぞれ一番小さい値の畳数のエアコンが最も効率が良いと言えます。
つまり、エアコンは6畳用、10畳用、200Vの14畳用の中から選ぶのが良いということです。
ただ、上記の理由だけをもとにエアコンを決めることは好ましくありません。
いくら200Vの14畳用のエアコンの効率が良くても、必要な冷暖房能力を満たしていなければ本末転倒です。
そこで、先ほど算出した必要な冷暖房能力を最大暖房能力と最大冷房能力と比較します。
それぞれの最大能力が必要な冷暖房能力を上回っていれば、その畳数のエアコンを購入すると良いことが分かります。
ここで鋭い方であれば、
「最大値で比較して良いの?定格能力の8割程度の負荷率での運転が一番効率が良いんじゃないの?」
と思われたかと思います。
安心してください。エアコンが定格以上の能力を必要とするのは電源を入れた直後から部屋が設定値の温度に達するまでの間だけです。
設定温度に達した以降の運転は定格値以下の能力での運転となるため、上記の選定方法で問題はないと考えます。
以上で正しいエアコンを選定する知識がみなさんにも備わったかと思います。
これからエアコンを設置される際には、是非一度、計算を行ってみることをおすすめします。
「ちょっと待ってくれ!!」
なんでしょうか。
・・・なるほど、最初に説明した6畳の洋室に6畳用エアコンは過剰であるといった説明に対して、6畳用以下の能力のエアコンが売ってないと。
その解決策は至って簡単です!
住宅全体を高気密・高断熱化すれば良いのです!そして全館空調を採用しましょう!
そうすれば、各居室にエアコンを設置する必要もなくなりますし、家中どこでも快適な温度になります!
さらに電気代も安くなるのです!
電気代が浮いて家全体が快適になるなんて、良いこと尽くめじゃあないでしょうか。
初期費用こそ少々お高くなってしまいますが、30年ローンを払うなかで十分に元を取ることはできます!
住宅設備は10年前後で買い替えが必要になりますが、家の性能は一生です。
30年後、後悔しないためにも、現在新築をご検討されている方は是非、高気密・高断熱化のご検討もされてみてください。
以上、アーバンホーム玉名店設計課の横山でした!
参考文献
1)「家は、空調。」24時間全館冷房(除湿)by 一条工務店<https://iiie296.com/?p=13687>
2)一般社団法人 日本エネルギーパス協会<http://www.energy-pass.jp/>
3)さとるパパの住宅論<https://www.2x6satoru.com/>
4)ダイキン工業株式会社<https://www.daikin.co.jp/>
5)松尾設計室<https://matsuosekkei.com/>
6)松尾和也(2017)『ホントは安いエコハウス』新建新聞社
7)松尾和也(2020)『エコハウス超入門 84の法則ですぐ分かる』日経BP